メコイスの壷

部屋を掃除していたらばいきんまんの逆襲なんて本*1が出てきましたよ。アンパンマンの。
ヤーダ国のヤーダ姫*2がメコイスの壷を手に入れたらバイキンマンに奪われて悪用されるという物語です。
ヤーダ姫の話によると、メコイスの壷を使えば滅びてしまったヤーダ国を復活させることができるそうですが、バイキン仙人の話によるとバイキンマン(仙人)が手にするとバイキン帝国の帝王になれるそうです。
ヤーダ姫は見たところ高く見積もっても十代前半、悪くすると一桁の年齢に見えますが、メーヴェと少し似た感じの一人乗りの飛行機に乗って砂漠を颯爽と飛んでいました。
この行動力は若い好奇心と王族の権力によるものでしょうか。
しかし後者の権力はヤーダ国が滅亡し、あまっさえ遺跡として完全に人の住めない場所になっているため、どう考えても不自然です。
あんな便利な乗り物を用意できるかどうかすら怪しいものです。
そもそも滅亡したヤーダ国を復活させることは果たして正しいのでしょうか。
ヤーダ姫はヤーダ国の王女と名乗るくらいですから、ヤーダ王族の血筋のものでしょう。
国が滅びても王族が生きているということは亡命して逃げのびたに違いありません。
そうするとヤーダ姫を一人で砂漠へメコイスの壷をとりに行かせるなんて親たちはいかれているとしかいえません。
そんないかれた行為をさせるため、水すら満足に持っていかせられないのにあの高度な乗り物を使わせるのは、やっぱりいかれています。
しかし、もし経済力がありメコイスの壷を探させる必然性がありそのくせ取りに行く当人のことをちっとも考えない人物が他にいれば全て辻褄は合います。
そういえばヤーダ姫がメコイスの壷を見つけたとき、バイキンマンが都合よく即座にやってきてメコイスの壷を奪っていました。
バイキンマンがメカを用意できることは一目見て明らかです。
バイキンマンはメコイスの壷を使って最強の大魔王になることができます。
バイキンマンがヤーダ姫の無事を考えているはずがありません。
バイキンマンがメコイスの壷を取りに行くことになった話の後にヤーダ姫が登場しました。
私は本でずいぶんと端折ったあらすじしか見ていないので映画本編*3ではもしかしたら詳しく描かれていたのかもしれませんが、本を見た限りの印象では、バイキンマンがヤーダ姫に入れ知恵してメコイスの壷を探させたと考えると非常に自然です。
なぜわざわざヤーダ姫を使ったのかというと、きっと子どもだから口車に乗せやすく、見つけたときに力ずくで奪えたからなのでしょう。
なんでも力と餌で解決しようとして不利になったら集団でかかるどこぞのパンとは大違いで、非常に狡猾で合理的なやり口です。
そして、物語が終わった後、ヤーダには残酷な運命が待っています。
どんなに建物が美しくとも、国民がいなければ国ではないのです。
いまやヤーダ国民といえるのはヤーダ一族のみ。
一家族で住むには広すぎるその建物は、美しく生まれ変わってもやはり遺跡は遺跡でしかないのです。
メコイスの壷、それはたとえ表面上は願いをかなえたようでも、実はスイコメの一言で消えてしまう儚い虚像しか作り出せない幻覚の壷だったのです。

*1:isbn:4577000199

*2:ヤーダ星のヤーダ姫ではない。

*3:asin:B00005YV2X